政治から企業まで成長プロセスについて


これは、トヨタの「管理の神様」と呼ばれ、元専務だった根本正夫さんの持論であった。
トヨタからそのグループの人々にこれを具体的に説明し、改革から現状維持までのステップアップの重要性を話してこられた。
しかし、この成長プロセスの話は、物づくりの代表である自動車のみでなく、国・地方の政治・官僚議員の仕事をはじめ、医学,教育,1次〜3次産業まで、共通性のある考え方をして、幅広く適用出来ることである。それぞれの使用されているしくみやシステム,ルールが必ずあると思われる。

1.維持…今より悪くならない様に、しくみ、システム、ルールを作り、現状レベルを保つことであり、これが成長に
     とっては最も大切なことである。他の2つに比べて地味ではあるが、維持が弱いと、いくら改善,改革を行って
     も、十分な効果は得られません。例えば年金管理,財政赤字の社会保障等も、この維持が弱い例です。
     また、物づくり於いては、企業が決めた就業規則を守ることは当然であり、その他作業標準や標準作業,生産
     システムをはじめ、多くのルールを守り、良い品質の物を決められたコストで造り、納期通りお客様に求められ
     る当然の活動がまず出来る事が必要です。また、維持のため企業は、人材確保,育成も大切な行動です。
                                                            
2.次は改善(KAIZEN)ですが、これは欧米には物づくりの中にはその概念が有りませんでした。今は日本企業
  に各国が学び、まだ十分ではありませんが導入される様になりました。改善は、各職場(官民業種を問わず)
  それぞれの人の仕事に於いて、ムダを徹底的に無くすことが基本です。トヨタ生産システムの中では、ムダを
  7つに分けて、物づくりに伴うムダの発見とその解消に日々努めております。改善は、完了し、良くなった時に
  は提案という形で提出され、上司の評価を受けます。トヨタグループでは、1人月4件位の目標を与えられます
  が、未達成の人もいますが、1日1件位出す人もたくさんおります。個人による改善以外に、グループで行う
  改善は、長くても3ヵ月以内で完了する様なテーマを取り上げ、出来るだけ短いサイクルで行う努力が必要です。
  改善は、巧遅より拙速を優先します。70%でもいいから早くやってみる事が大切です。私も上司からムダを指摘
  されますと、「すぐやります」との返事しかありませんでした。この「すぐやります」の意味は、「今日中に行う」と
  いうことでした。スピードが大切です。また改善は質より量の方が大切です。多くの改善の中に、時々質の高い
  物が有るのであり、逆はありません。
  また、改善に失敗することもありますが、失敗を受け入れる職場の受け止めがあり、失敗を恐れず、指摘せず、
  上司が良い方へ、ヤル気が出る様に指導することが大切です。失敗が許される,認められることが改善を進め
  る上で重要なことです。トヨタ生産システムの7つのムダの内容は、ホームページのトヨタ生産システムを参考
  にして下さい。
  この改善活動が円滑に進むためには、意識はもちろん、もう1つは、ムダを見つける目を養う必要があり、これ
  は自らの努力や、他の人が行ったものを参考にしながらやってみて下さい。
  トヨタの株主総会等、収益確保の中にいつも原価(コスト)低減による効果という項目が出てきます。開発,設計,
  事務管理部門,教育部門,工場等、全ての社員が改善に取り組めば、必ず収益向上に寄与できることも十分
  可能です。  
  政治家の国家予算の様に、始めから枠を決め、こちらを増やせばあちらの費用を減らすといった、単なる算数
  的な処理をするだけでは、仕事をしているとは言えません。軍事予算を増やした分だけ社会保障を減らそうとか、
  ただ単に数合わせの発想では、再建は永久に不可能です。維持すらできないのに改善をするのは無理という
  事になります。各省官僚から地方公務員の方々、国会議員から地方議員までの方々に、改善の勉強をして
  ほしい。そしてもう一度、仕事の中に潜むムダを見つける目を持って下さい。
  ムダが見えないなら、「ムダとは」から始め、「ムダが顕在化(目で見える)」様な仕組みづくりも必要なのかも
  しれません。何もやられていないとは申し上げませんが、意識として、その仕事のプロと思われるなら、仕事
  の基本と共に必要なことです。
  エネルギー確保や環境の話しでは、エネルギー転換の大きな話が出てきます。では、国民1人1人が職場や
  家でやれる改善のレベルの省エネでは、どんなことを民間企業でやってきているか、私の知っている会社の
  例です。
  この会社は、自家発電により、コージェネレーションを行って、売電は殆ど必要がありません。営業の職場へ
  行くと、蛍光燈には、1本1本点燈,消燈のスイッチを入れる紐が付けてあります。営業は、外出することが多い
  職場なので、外出する人は自分の使う蛍光燈は、都度スイッチを入切している。これは、企業にとって決して
  大きな省エネ効果を生み出すことはないが、まずコスト意識やムダを理解する方法として、おそらくやっている
  のだろう。太陽エネルギーも、光熱を本当に使い切り、少しでも自家発電が出来れば考えるなら、太陽パネルの
  普及に努めるために、太陽パネルメーカーはコストダウンに努力し、よく判らない電力会社と国の規制をなくす
  ことも、また改善に結びつく方法である。国や公共機関の方々の意識は、本当にあるなら、新築される家に太陽
  パネルの補助を、広く考えるのも良い。

3.もう1つは、改革により、国,民間を問わずレベルアップを図ることが行われ、いつも国会では、この「改革」と
  いう言葉がもてはやされている。国のやる事は、改革ばかりというと、そうとは言えないのではないか。確かに、
  政治改革(縦割りシステムの国から地方の自治体までの変更)の1つで、選挙制度,議員定数の大幅な削減や、
  教育改革,農業改革,税金等、数多くのことが、総理大臣のリーダーシップで進められている。民間企業では、
  企業の大幅なレベルアップを狙い、中長期的計画・年度計画等を展開している。詳しい事は後にして、今やこの
  言葉を聞かない事もないが、疑問のあるものも少なくない。
  改革の代表例として、自動車で言えばモデルチェンジが該当する。また民間で言えば新製品開発,工場建設,
  大型設備投資からM&A,株式上場等、言えばきりがない。
  これは、国の場合は当然、総理大臣と各省大臣がリーダーシップをとり、行政としてやってゆくことが多い。最近
  問題になっている各改革プロジェクトの最高責任者がはっきりしていないとか、内容の丸投げとか、やらねばなら
  ない事が行われないことである。各方面の専門家と言われる人で構成する委員会等への丸投げも多いが、基本
  的なことは当事者や責任者を中心に、基本計画,必要な目標(出来る出来ないではなく)を掲げる事くらいはやる
  ことである。
  いずれにしても、国の仕事は100%総理大臣が最終責任者であり、その責任の取り方が本当にふさわしいの
  か、はなはだ疑問であることも多い。
  民間企業でも、中長期にわたる(3年〜5年)改革計画は、競合他社と比較しても優れたものであり、実施する
  企業として大幅な飛躍につながるのか、常にチェックの計画をつくり、評価し、必要であれば目標,内容の変更
  を、より高いレベルにしてゆく必要もある。
  まとめとして、これら維持,改善,改革へ、どの程度のウェイト付けをするかであるが、一般的には、維持には
  50〜70%、改善,改革にはそれぞれ25〜35%程度のウェイトかと考える。維持はこの様に、最もエネルギー
  を注ぐ必要がある。年金やその他の情報管理,システム構築等が問題で、通常業務が維持できないことは
  たくさんある。どんな仕事(官民を問わず)も、この維持が確実にできなければならない。










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